● 症状と所見症状のみで子宮内膜症の診断を確立することは困難である。
症状はそれほど多様であり、過敏性腸症候群や骨盤炎症性疾患などとかなりオーバーラップする。 その結果、症状開始から確定診断にいたるまで最高12年を要するが、こういうことはしばしばある。 臨床および患者経験によると、子宮内膜症によって起こされる症状は以下のとおり ;重症の月経困難症;深い性交痛;慢性骨盤痛 〔J注:月経時以外の下腹部痛〕、排卵痛;異常出血の有無に関わらず周期的もしくは月経期の症状(例えば腸または膀胱関連); 不妊症と慢性疲労。 しかし、一症状もしくは症状群と原因との因果関係は不確かなままであり、かなりの女性は無症状である。 〔J注:欧米の不妊医療では当たり前に腹腔鏡検査をするので、痛みのない内膜症が確定診断される比率が日本より高いと考えられる。 JEMA相談でも、画像診断でチョコがあるが、月経痛はなく不妊が問題というケースは結構ある。〕 内診で、骨盤底の圧痛、子宮の後屈や固定化、仙骨子宮靭帯の圧痛、あるいは卵巣の腫大を発見した場合には、子宮内膜症を疑う。 もし深部浸潤性結節〔J注:深部にある小さくても塊の部分〕が仙骨子宮靭帯あるいはダグラス窩に発見された場合、あるいは膣や 子宮頸部に病変が見える場合は、診断はいっそう確かなものとなる。しかしながら、臨床所見は正常に見えるほうが多い。
● 診断
腹腔鏡の実施は月経周期のいつが良いかエビデンスは不十分であるが、過小評価(不十分な診断:under-diagnosis)を避けるために、 ホルモン治療中や3ヶ月以内は実施されるべきではない。
● 検査
超音波検査
〔J注:膜症の取扱い規約第2部の画像診断では、富樫氏がエコーでは皮様嚢腫や卵巣がんとの鑑別が困難なケースも多いと、詳細に解説している。JEMA相談でも、チョコ再発と推測し、不妊治療や嚢胞処置で腹腔鏡をすると、偽嚢胞や黄体出血性嚢胞だったというケースがときどき見られる。〕 MRI 現在のところ、MRIが腹腔鏡と比べて子宮内膜症を診断あるいは除外する、有用なテストであるというエビデンスは不十分である。〔J注:なぜかMRIだけ枠も信頼度もない。 日本のMRI台数(国民100万人当たり)は世界1位で2位の米国の2倍、EU総合より多く、 CTは2位の韓国の3倍もある。〕 血液検査
〔J注:JEMA相談では、年単位の鎮痛剤のみでの経過観察や薬物治療で、CA-125の増減で悪化や改善を語る医師が登場するが、 月経周期の同じ時期の比較でないと意味がない。〕 疾患の範囲を評価する検査
〔J注:JEMA相談では、尿管や膀胱に内膜症の影響が及び、知らぬまに水腎症になっているケースがある。病巣や癒着の範囲が広そうな場合や複雑な術後には、腎臓エコーが有益。〕 卵巣嚢胞の評価
腹腔鏡
〔J注:過小評価してしまう原因は、G薬などで腹膜病変(疼痛、不妊、進行の原因)が一時的に治療されて見えなくなるからで、診断だけでなく治療(疼痛緩和、不妊改善、進行遅延)の効果も下がる。ホルモン剤で一時的に見えなくなった病変は、薬が体内から消えると復活する。 このことからも、術前ホルモン治療は不十分な手術になるとわかる。〕
〔J注:開腹でも見えないのは同じ。子宮の裏側のダグラス窩付近は、開腹は腹腔鏡より見えづらく手術しにくい。〕 |
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